金利が上がったら、税金はいくら減る?利息の経費とローンの自腹

変動金利のローンで賃貸物件を持っていると、金利が上がるニュースのたびに「利息が増えても経費になるから、そのぶん税金が減ってトントンでは?」と考えたくなります。結論から言うと、トントンにはなりません。税金で減るのは、増えた利息そのものではなく増えた利息 × あなたの税率の分だけです。

年収500万円の会社員なら、その割合はおおむね15%。利息が45万円増えても税金が減るのは約6.8万円で、残りの約38万円は自腹です。このページでは、その仕組みと、不動産の収支ごとの早見表、自分の数字で試せるシミュレーターを、令和8年分の税率で示します。

やりがちな失敗

よくある誤解は「利息は経費だから、金利が上がっても税金が減って相殺される」というもの。経費になるのは本当ですが、経費が減らすのは税金がかかる所得であって、税金そのものを同じ額だけ減らすわけではありません。所得税5%と住民税10%の段にいる人なら、利息が100円増えても税金が減るのは約15円。残りの約85円は手元から出ていきます。しかも赤字の年は、土地の分の利息は給与と差し引きすることすらできません。

利息は経費になる。ただし減るのは「税率の分」だけ

賃貸物件のローンの利息は、不動産所得(家賃収入から経費を引いた、税金の計算上の儲け)を計算するときの経費になります(所得税法37条。経費になるものの一覧は経費12項目の記事)。経費になるのは返済額のうち利息の部分だけで、元本の返済は経費になりません。

経費が増えると不動産所得が減り、給与と合わせた所得が減ります。減った所得には税金がかからなくなるので、減る税金は次の2つです。

年収500万円の会社員の場合、社会保険料を給与の15%とすると、税金のかかる所得(課税所得)は約177万円です。所得税は課税所得195万円未満なら5%の段なので、増えた利息に対して減る税金は 5% × 1.021 + 10% = 約15.1%。利息が増えた額の約15%しか、税金は肩代わりしてくれません。

例として、借入3,000万円・35年返済(元利均等)で金利が0.5%から2.0%に上がると、上がった直後の1年間の利息は約14.8万円から約59.5万円へ、約44.6万円増えます。以下ではこれを丸めて、利息が年45万円増えた場合で計算します。借りたばかりのローンの場合の数字で、返済が進んで残高が減っていれば、増える利息はもっと小さくなります。

年収500万円なら、いくら減る?(不動産の収支別の早見表)

年収500万円・社会保険料は給与の15%(75万円)・扶養なしの会社員で、土地の分の利息は0とします。この会社員が、利息が増える前の不動産所得が下の金額だったとして、利息が45万円増えたら税金がいくら減るかを計算しました。所得税は令和8年分、住民税はそれに対応する令和9年度分です。数字は下のシミュレーターと同じ計算式から出しています。

利息が増える前の不動産所得所得税の減少住民税の減少減る税金の合計増えた利息のうち税金で減る割合自腹(45万円 − 合計)
赤字 200万円0円38,000円38,000円8.4%412,000円
赤字 150万円13,783円45,000円58,783円13.1%391,217円
赤字 100万円22,972円45,000円67,972円15.1%382,028円
0円(トントン)22,972円45,000円67,972円15.1%382,028円
黒字 15万円22,973円45,000円67,973円15.1%382,027円
黒字 30万円29,098円45,000円74,098円16.5%375,902円
黒字 50万円39,308円45,000円84,308円18.7%365,692円
黒字 100万円45,945円45,000円90,945円20.2%359,055円

この表は土地の分の利息を0として計算しています。建物だけを買うためのローンか、借入額が建物の代金以下で、建物優先の特例(借入れをまず建物の代金に充てたものとして計算できる特例)によって借入れが全部建物に充てられる場合にあたります(措置法41条の4の記事)。黒字30万円以下の行は利息が増えたあとの不動産所得が赤字になるので、土地の分の利息があれば、実際に減る税金はこれより小さくなります。

たとえばこの例のローンの3分の1(33.3%)が土地の分なら、上昇後の利息約59.5万円のうち約19.8万円が土地の分の利息です。利息が増える前の不動産所得がゼロの年に減る税金は38,051円(約3.8万円・増えた利息の8.5%)にとどまります。利息が増えたあとの赤字45万円のうち約19.8万円は、給与から差し引けないためです。

読み方は3つです。

金利上昇の節税シミュレーター(令和8年分・概算)

「土地の割合」は、ローンのうち土地を買うために使った部分の割合です。売買契約書の土地の価格 ÷ 物件価格がおおよその目安で、建物優先の特例(借入れをまず建物の代金に充てたものとして計算できる特例)を使えば0になることもあります(措置法41条の4の記事)。利息が上がる前と後の両方の年について、利息の合計 × この割合を土地の分の利息とし、赤字のうちその額までは給与から差し引けないものとして計算します。

減る税金の合計
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うち所得税(令和8年分)
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うち住民税(令和9年度分・6月からの税額が下がる分。還付ではありません)
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増えた利息のうち税金で減る割合
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自腹(増えた利息 − 減る税金)
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前提:所得税は令和8年分の税率(国税庁No.2260)・復興特別所得税2.1%と、令和8年度税制改正後の給与所得控除・基礎控除(最高104万円)で計算しています(国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」)。住民税は住民税の基礎控除43万円・所得割の標準税率10%(自治体により異なる場合があります)で計算した令和9年度分の目安です。社会保険料は年収の14〜16%と仮定しており、幅はこの仮定から出ます(上の早見表は15%で計算)。土地を買うための借入金の利息の制限(租税特別措置法41条の4)は、「土地の割合」を入れたときだけ反映します(0なら赤字はすべて給与と差し引きしたものとして計算)。土地の分の利息は、上がる前の年を(上昇後の利息の合計 − 増える利息)× 割合、上がった後の年を上昇後の利息の合計 × 割合として計算しており、割合は0.1%単位で扱います。住民税の調整控除も計算していません。単身・扶養なしなら調整控除は2,500円で、利息が増える前と後で同じ額なら差には影響しませんが、住民税の課税所得が5万円未満まで下がる場合は最大2,500円、表示が多めになります(早見表の赤字200万円の行は、実際には35,500円程度)。扶養控除などその他の所得控除、住民税の非課税限度額・均等割、給与と差し引きしきれない赤字の繰越し、所得税の還付の上限(源泉徴収税額)は反映していません。

ただし:実際の効果は、早見表よりさらに小さくなりやすい

赤字の年は、土地の分の利息が給与と差し引きできない

利息が増えたあとの不動産所得が赤字なら、その赤字は給与の所得から差し引いて税金を減らせます(給与など他の所得と赤字を差し引きすることを損益通算といいます)。ただし、赤字のうち土地を買うための借入金の利息にあたる部分は、給与から差し引けません(租税特別措置法41条の4)。建物と土地をまとめて買うローンなら、増えた利息にも土地の分が含まれます。その年は、早見表の数字よりも減る税金が小さくなります。シミュレーターでは「土地の割合」と「上昇後の年間の利息の合計」を入れると、その分を除いて計算します。どこまで差し引けないかの計算は措置法41条の4の記事で解説しています。

買った年の大きな赤字で、所得税がもうゼロになっていることがある

物件を買った年は、登録免許税(登記にかかる税)や不動産取得税なども経費になるため(国税庁No.2215)、不動産所得が大きな赤字になりやすく、その赤字だけで給与の所得税がゼロ近くまで下がっていることがあります。そこへ利息が増えても、もう減らせる所得税は残っていません。早見表の「赤字200万円」の行がこれで、所得税の減少は0円、減るのは住民税の3.8万円だけです。

住民税は「戻る」のではなく「翌年度が下がる」

早見表のほとんどの行で、減る税金の半分以上は住民税です。住民税は前の年の所得をもとに計算されるので、令和8年分の利息が増えた効果は、令和9年6月からの住民税の額が下がるという形で出ます。いま現金が戻ってくるわけではなく、金利が上がってから効果が出るまで1年以上のずれがあります。

借り換えや繰り上げ返済は、この記事の範囲外です

このページは「金利が上がったとき、税金がどれだけ肩代わりしてくれるか」だけを扱います。借り換えや繰り上げ返済をするべきかどうかは、手数料や手元資金、ほかの借入との兼ね合いで答えが変わるため、ここでは扱いません。

損する / 得するサイン

シミュレーターの結果がこうなら、税金ではなく手残り(家賃から返済と経費を払ったあとに残るお金)を見直すサインです。

こうすればOK

  1. 上のシミュレーターに、自分の年収・不動産所得・増える利息を入れて「自腹」の額を見る。
  2. 税金で埋まると考えず、増えた利息のほぼ全額が手残りから出ていく前提で、毎月の収支を見直す。
  3. 赤字の年は、ローンのうち土地の分がどれだけかを売買契約書で確認する(措置法41条の4の記事)。

この記事の根拠(一次情報)

内容数値・ルール出典時点
不動産所得の必要経費総収入金額を得るため直接に要した費用+その年における業務について生じた費用e-Gov 所得税法37条1項現行(最終改正 令和7年法律第70号・施行 2026年10月1日)
所得税の税率(課税所得別・7段階)195万円未満5%、195万円以上330万円未満10%(千円未満切捨て後)〜最高45%国税庁 No.2260令和8年4月1日現在
復興特別所得税基準所得税額の2.1%(令和8年分)。令和8年度税制改正で防衛特別所得税が創設され、令和9年以後は復興特別所得税の税率が引き下げられる(両者の合計税率は変わらない)国税庁 No.2260・No.2507令和8年4月1日現在
給与所得控除(令和8年分)収入360万円超660万円以下は 収入×20%+44万円(年収500万円なら144万円)。改正は最低保障額74万円(収入220万円以下)のみで、220万円超は改正なし国税庁 No.1410・令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし令和8年4月1日現在
所得税の基礎控除(令和8年分)合計所得489万円以下は104万円(62万円+加算42万円)、655万円以下67万円、2,350万円以下62万円国税庁 令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし・No.1199令和8年4月1日現在(施行 令和8年12月1日・令和8年分以後適用)
住民税所得割の標準税率10%(道府県民税4%・市町村民税6%)。自治体により異なる場合があります総務省 個人住民税—(ページに日付表示なし。最終更新 2026年7月2日)
住民税の基礎控除43万円。令和8年度税制改正による変更はなし総務省 個人住民税の基礎控除等について令和8年5月29日
住民税の調整控除(計算には含めていない)合計課税所得200万円以下なら、5万円(単身・扶養なしの場合)と合計課税所得のいずれか少ない額の5%(道府県2%・市町村3%)e-Gov 地方税法37条・314条の6現行(最終改正 令和8年法律第2号・施行 2026年10月1日)
登録免許税・不動産取得税業務の用に供される資産(土地・建物)に係るものは必要経費に算入国税庁 No.2215令和8年4月1日現在
赤字と給与の差し引き(損益通算)と土地利子不動産所得の赤字は他の黒字の所得から差し引ける。ただし、必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は対象外国税庁 No.1391令和8年4月1日現在
建物優先充当の特例土地と建物を一の契約で同一の者から取得し、負債の額を区分することが困難なときは、負債がまず建物、次に土地等の取得の対価に充てられたものとして計算できるe-Gov 租税特別措置法施行令26条の6第2項最終改正 令和8年政令第98号(e-Gov 改正履歴で施行済みの最新は 2026年7月31日施行分)
土地利子の損益通算制限不動産所得の損失のうち、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分は「生じなかつたものとみなす」e-Gov 租税特別措置法41条の4現行(最終改正 令和8年法律第12号・施行 2026年10月1日)

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年10月時点の情報です)